大学日本一に輝いた野球部が陸前高田市で野球教室を開催

野球部

2017/07/06

アスリート&スポーツ

OVERVIEW

2017年春季の東京六大学野球リーグ戦で18年35季ぶりに優勝し、その後行われた第66回全国日本大学野球選手権大会で59年ぶりの日本一に輝いた立教大学野球部が、東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市で6月25日(日)、野球教室を開催しました。

今年で6回目を迎える野球教室には、両大会に出場し優勝に導いた手塚周投手(コミュニティ福祉学部2年次?福島県出身)をはじめ、東北出身の選手10名(うち地元の岩手県立高田高校出身者は3名)を含む計25名の野球部員が参加しました。

この野球教室は、陸前高田の子どもたちが、大学スポーツ界のトップレベルを目指す学生たちとの交流を通じて、物事に真摯に取組む姿勢や、周りと協力して何かを成し遂げることの素晴らしさ、困難な状況も自ら打開していくことの大切さを知ってもらう機会をつくることを目的としています。同時に、被災地の子どもたちとの交流を通じて、学生自身にとっての貴重な学びの機会としています。

被災地見学の様子

野球部は6月24日(土)に陸前高田市に入り、東日本大震災による大津波によって壊滅的な被害を受けた高田松原の中で奇跡的に一本だけ残った「奇跡の一本松」、津波の恐ろしさを後世に語り継ぐため震災遺構として保存されている「道の駅タピック45」、津波被害を受けて土地のかさ上げが行われていた陸前高田市の中心部に2017年4月にオープンしたショッピングセンター「アバッセたかた」の3カ所を見学しました。
「奇跡の一本松」を見学する野球部員

「奇跡の一本松」を見学する野球部員

「奇跡の一本松」の前では、岩手県立高田高校出身の山口直樹学生コーチ(コミュニティ福祉学部?3年次)が部員に向け、 「当時は中学二年生で、先輩の卒業式に向けて合唱練習をしていた。自分たちは先生の判断ですぐに高台に避難した。7万本の松が次々と倒れて、町が波にのまれていくのを上から見ながら、たくさんの方が亡くなることを直感した。震災後は辺り一面がれきだらけだったけれど、そんな中で、この『奇跡の一本松』は地元民の希望であり、心の支えだった。自分もこの松のようにまっすぐ生きていきたい」と語りました。

施設見学後は市内の宿泊先にて、高田高校在学中に甲子園出場の経験を持つ陸前高田市役所職員の村上知幸氏より、震災の経験談、そして陸前高田市の復興の状況についてお話を伺いました。

野球教室の様子

6月25日(日)、高さ12メートルのかさ上げ地に整備された市立第一中学校仮設グラウンドには、立教大学野球部25人と、高田一中29人、気仙中9人、高田東中35人の中学生球児計73人が集まりました。
開会式では、前田一男野球部長(文学部教授)が「25人は、陸前高田へ行きたいと自分から手を挙げたメンバー。今日は選手たちからたくさん学んでほしい」とあいさつ。両大会の優勝旗や優勝カップも持参し、中学生球児たちに紹介しました。そして陸前高田市役所職員の村上知幸氏より、戸羽太陸前高田市長からの祝辞が代読されました。
戸羽太陸前高田市長からの祝辞
立教大学野球部の皆様、「第66回全日本大学野球選手権大会」での59年ぶり4回目の全国制覇、誠におめでとうございました。
全日本大学野球選手権大会は、全国の加盟26連盟の春季リーグ戦等を勝ち抜いた代表27大学が一堂に集い、日本一の栄冠を争う大会であり、優勝を成し遂げることは並大抵のことではなく、日々の厳しい練習をと弛まぬ努力の賜物であり、深く敬意を表する次第であります。
立教大学様には、震災以前から生出地区で実施されている「林業体験プログラム」を通じて、地域住民との交流を重ねていただき、震災後には学生ボランティアの活動やスポーツ交流など多岐にわたる取組みを実施していただいておりますことに改めて感謝申し上げます。この4月には、立教大学、岩手大学、本市の三者間で締結した「地域創生?人材育成等の推進に関する相互協力及び連携協定」に基づき、「陸前高田グローバルキャンパス」が新たな交流活動拠点としてスタートいたしました。
また、この野球教室においては、今回で6回目を迎え、選手の皆様の丁寧な指導や華麗なプレーを見せていただけることで、生徒たちに笑顔と元気を与えて下さることに、重ねて御礼申し上げます。
東日本大震災から7年目を迎え、本市の復興状況につきましては、新たな中心市街地が形成されるかさ上げ地に、商業の拠点となる大型商業施設「アバッセたかた」がオープンし、復興への道を一歩ずつ着実に歩んでおります。また、平成30年度末には、高田松原津波復興祈念公園内に「東北楽天ゴールデンイーグルス奇跡の一本松球場」が完成を予定しておりますので、今後、プロ野球や大学野球等のレベルの高い試合を観戦する機会が増えることを楽しみにしているところであります。
結びに、立教大学様の益々のご発展と立教大学野球部のなお一層のご活躍とご健勝を祈念し、お祝いの言葉といたします。

平成29年6月25日
陸前高田市長 戸羽 太
中学球児にバッティングを指導

中学球児にバッティングを指導

3時間にわたった野球教室では、バッテリー、内野手、外野手にそれぞれ分かれ、ポジションごとに打撃?守備の練習を実施。シートノックやバッティングのデモンストレーション、チーム対抗のベースランニングリレーも行い、中学生球児との交流を楽しみました。

福島県出身で今回の教室の指導役の一人である手塚周投手は、中学2年で震災に遭い、原発事故の影響で避難生活を経験しながらも、立教大学に一般入試で入学。有力選手がひしめく野球部内の激しい競争にも勝ち抜き、両大会の優勝に導いた主力投手の一人。中学生球児に投球のコツを直接アドバイスした後、実践さながらの迫力ある投球を披露して会場を湧かせました。
手塚投手の投球デモンストレーション

手塚投手の投球デモンストレーション

手塚投手は「プログラムを通して陸前高田の皆さまの笑顔を拝見することができ、少しでもなにかできたのかなと感じました。今後とも微力ではあると思いますが、自分たちにできることを自分たちにしかできない方法で行えたらと思います」と力を込めました。参加した高田一中の球児は「野球を楽しませていただき、今日は楽しかったです」と目を輝かせました。
野球教室の様子を見る
中学球児からの質問タイム

中学球児からの質問タイム

野球部が持参した両大会の優勝杯を横目に練習

野球部が持参した両大会の優勝杯を横目に練習

両大会の優勝旗も置かれる

両大会の優勝旗も置かれる

中学球児との交流の様子

中学球児との交流の様子

立教大学と陸前高田

立教大学と陸前高田市は、同市の復興に向けた地域課題の解決と地域活性化の実現、発展に寄与することを目的として、2012年5月に「連携及び交流に関する協定」を締結。野球教室はスポーツプログラムの一つとして毎年開催されており、今回で6回目となります。
2017年4月には岩手大学と共に陸前高田グローバルキャンパスを開設。立教大学は、同キャンパス内にサテライトを設置し、市民や国内外の学生?研究者、企業や行政関係者などの交流活動の拠点としての活用を進めています。

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